お菓子の心〜15〜


食べ物をテーマにすると、テレビの視聴率は上がり、雑誌は売れ行きがアップするといわれます。物を作るだけならどうでもよいことであっても、商売となれば、結果よければすべてよしという味気ない結末となります。
菓子業界にも、売れる努力をしすぎ、無理に引き起こすブームがあります。地味に努力を積み重ね、本物志向で歩むお菓子屋さんまでも、作らなければいけないと思ってしまうほど、グイグイと引き込まれてしまいます。
記憶を少したどってみてください。チーズケーキのブームがあり、次にティラミス、クレームドブリュレ、ナタデココ、ゴマプリン、カヌレ・・・。発信元は、大手の食材メーカーなどですから、レシピや製法が日本中を飛び交うのも当然です。
正直私は不愉快です。ブームと称される商品より、はるかに美味しい品々が各店にあるはずです。でも消費者は、マスメディアの紹介する品ばかり求めます。それがどんなに高くてもです。人の好き好きと言われても納得できないのです。
その地域で受け入れられ、培われていく品や、その地でしか味わえない品を育ててほしいのです。ヨーロッパ風、都会風ではなく、まして流行など考えたくもありません。
しかしその発信がここ岩手であれば別です。自然に恵まれ、こんなに美味しい水と空気があるのですから。今となってみれば、都会にないものが良いとされる時代です。おらが町で売っている菓子が本当のお土産でありたいものです。
もちろん技術や取り組むスタンス、作り手の心など、どれ一つ欠けても良い素材を生かすことはできません。だから面白いのです。
私は一切宣伝なしでスタートしました。十年すぎて、お客様へのごあいさつ程度の広告でも未だにしかられることがあります。それほどまで、当店を大切に思ってくださるお客さまがいるということです。
勇気づけられる一方で、まだまだ困難なことが続きそうだなーと思いを巡らしています。