ベジタリアンで有名なリンゴスターとケーキ職人との出逢い。
1995年Beatlesのドラマー、リンゴスターが日本公演初日を盛岡で行いました。
リンゴスターはベジタリアンとしても有名で、当時主催者にとって大変神経を使わなければならない大きな存在だったと言われるほど。
お食事はマネージャーが用意しているものの、デザートとなると、現地調達になり四方八方手を尽くし探してもなかなかベジタリアン向けのケーキを探せずにいて、困り果てた末、当時盛岡で開いていた亀山の店、アンナ・マリーで引き受けることになりました。
忠実な伝統を守ったイギリススタイルのキャロット・ケーキを提供するか、純粋にオリジナルケーキを提供するか悩んだ結果、せっかく日本に来て、ここ盛岡で初めて口にするデザートなのだからと、心に残る個性的なケーキを提供したいと生まれたのがこちらのキャロット・ケーキ。
スタッフの方々の分もと少し多めに3台届けたところ、本人が全て控室に持ち込まれ、翌日の公演までスタッフには一切れも与えず、3台すべて独り占めしたと聞きました。
その美味しさは一体どんな点だったのか。
ニンジンそのものの甘さを無理に引き出すのではなく、おの美味しさが損なわれないよう大切に表現し、優しく伝えることに成功したしっとりしたケーキです。
そしてベジタリアンの方のために生まれたからか、カロリーは通常のケーキの三分の一程度。
以後、スティービーワンダー、スティング、フォーカラットなど様々なアーティストのデザートを引き受けるきっかけになったエピソードでした。
ミュージシャンと言われる方々が盛岡公演にいらっしゃると、知る人ぞ知るこのケーキを決まって求めていかれたものでした。
『本場ヨーロッパの味に負けない美味しさとは、日本の食生活の中で培われた感性と本物を提供するため、志を曲げることなく貫くということで生み出せるんだよね』