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『気持ちを伝えることのできるお菓子を作りたい』

Hironori.Kameyama(亀山 弘能)

profile1954年1月1日

岩手県釜石の老舗菓子店に生まれ、大阪でミュージシャンとして生活。
23歳の時、意を決して本格的な菓子作りの勉強を始める。

それから5年後

今田美奈子の元で東京日本橋三越本店のお菓子教室、サロンを担当。
プロを対象とした講師としても経験を積んだ。
翌年

大手お菓子メーカーのアンテナショップ「アステカ」の立ち上げに関わる。
1988年6月

ヨーロッパ各国での研修を重ね、『気持ちを伝えることのできるお菓子を作りたい』と、盛岡に「アンナ・マリー」という菓子工房をオープン。

1995年

東北初の大学経営に基づくキャリア科の誕生に至るまでの立ち上げに携わり、聖和短期大学フード&製菓学科の初代講師としてスタートする。
2010年地域に根差し親しまれた、可愛らしいお店として多くのファンに愛されたお店、「アンナ・マリー」。
パティシエ16人を一緒に育てたお店を閉め、釜石の実家である洋菓子専科かめやまの後継者とし再スタートを切った。
2011年3月11日

東日本大震災において、喫茶店でもあった大渡店を失う。
しかし、本店と工場を保ち、菓子作りを再開、無事提供できるまでに至る。
以降、釜石復興への期待を抱きつつ様々な活動に積極的に協力、今に至る。
2015年1月17日

初の三陸鉄道とのコラボで、レトロ列車≪スイーツ列車≫を運行!
第一回目は、東京目黒区で現在はアトリエを開いているクレモン・フェランのオーナー、酒井シェフとの念願のコラボを果たす。
市内外から約90人近くが参加。本格スイーツを三陸の景色を見ながら楽しむことのできるイベントとし、大盛況を収める。

詳しいスイーツ列車の内容に関してはこちらをご覧ください。→

以後、大手製菓メーカーの顧問照井隆パティシエとコラボを組み、可愛らしいお菓子を提供し続けている。

 

 

チョコレートへの情熱と職人の想い

「自分にとって必要な本物を見極める目。今の時代に足りない部分だと思うんです。」

チョコレートに懸ける想い…。
自分も愛せるチョコレートを作らなくちゃ!
ショコラティエとしても活躍するほど、チョコレートを愛してやまないオーナー。

チョコレートの魅力とこだわり

ー開店当時から、「コーヒー一杯で食べきれるサイズ」をコンセプトに作ってきたケーキの数々。様々なケーキで彩られるショーケースの中で、ひときわ“貫禄”を感じる、深く濃い茶色のショコラ。繊細さと、堂々とした存在感を兼ね備えたショコラが生まれる現場とは。

亀山→チョコレートは、すごく正直。
作り方次第で、善し悪しがはっきり出る、艶も輝きも作り手の想いを映す、まさに鏡のようだと思います。
愛情を込めた分だけ良いものができますし、それに、口に入れる瞬間から食べた後まで、きちんと作り手の想いを伝えてくれるのです。それがチョコレートの魅力だと思います。
だから、私の場合、カカオの原産地選びから、それに合うお酒選びまで、業者さんが困るほど、こだわっています。

何より必要なのはお菓子へこめる想い

ーフランス菓子を筆頭に、ドイツ菓子、スイス菓子、ウィーン菓子とヨーロッパのお菓子作りの技術を習得した亀山さん。東京では有名百貨店のティールームを任され、原宿での製菓業界のアンテナショップ出店に伴い、企画から参加。ショコラ、ケーキ専門のシェフとして、プロを指導する講師として経験を重ねた後、1988年に盛岡で自分の店を開店。以来約20年。
菓子作りの想いとは?

亀山→基本的なテクニックは当然、必要です。でも、もっと必要なのは、そうした技術や経験を越えた豊かな発想です。フランス菓子だから、こう作らなきゃいけない・・・なんて事はないと思います。誰にどんなお菓子を届けたいか。その想いからお菓子作りはスタートすべきなんだと思います。

技術しかない人は、どうしても見栄えばかり気にする。でも、食べたときにおいしいと思えなきゃ意味がないんです。経験を重ねてくると、だんだん自分が持ってきた技術がスーっと削ぎ落とされて、必要なものだけが残る。
そうすると、華美なデザインから自然とシンプルなものに変わって来るんです。お菓子は、人を惹き付ける見た目も大事だけど、それ以上に味が充実していないと。
ある方に、「十年やってる人も、今日やる人も心を込めるかで味が決まる」と言われて、すごく励みになりました。
それと人間味かな。音楽に例えるなら、どんなに指使いがうまいトランぺッターでも、楽譜通り吹いたのでは、心に響かないでしょ?どれだけ苦労を重ね、人と出会い、細かな感情を表現できるか。その人の経験やセンスが、人を惹き付ける音を生み出すんですよね。お菓子作りもそれと同じだと思います。

信じられる自分の舌を持つこと

ー自身のお菓子作りだけではなく、職人を育てる“先生”としても活躍の場を広げてきた亀山さん。職人を目指す人はもちろん、これからの時代を担う若い人に伝えたいことは?

亀山→本当に美味しいものを食べてほしいと思います。
それは、美食家が美味しいと言ったから、雑誌やテレビで美味しいとあったから、みんなが美味しいと薦めるから・・・ではないんです。自分の心から美味しいと感動するものに出会って欲しいし、信じられる自分の舌を持って欲しい。情報が交錯する中で、周りに流されずに自分なりの価値観、スケールを持つって難しいと思います。

せめて、「記憶に残して置きたい!」と思えるような味に出会って欲しいし、私もそう思ってもらえるようなお菓子作りに励みたいと思います。