お菓子の心〜11〜


いよいよクリスマスです。今年こそはベストコンディションで臨みます。フランスのクリスマスケーキといえば、ブッシュ・ド・ノエルという丸太の形をしたケーキです。
このお菓子には、いくつかの由来があります。その一つに、貧しい青年が、クリスマスなのに、いとしい彼女にプレゼントを何一つ買ってあげられず、思いあまって、せめてイブを暖かく過ごして欲しいと、程よい大きさの丸太に、真っ赤なリボンを結んでプレゼントしたという話があります。プレゼントをする真の姿かなあ、と私は思います。
ドイツには、スパイシーなシュトゥレンというお菓子があります。この菓子は、イエス様のゆりかごを見立てたものとも、イエス様をくるんだ状態を形にしたものともいわれます。十二月に入ると全てのパン屋さんやケーキ屋さんは作って店頭に置きます。二十四日間かけて、一切れ一切れ食し、最後の一切れをイブに食すために、特定のサイズがあるといわれます。
イタリアではパネトーネ、イギリスはプティングというフルーツケーキがあります。フルーツやナッツをびっしりと詰め、さらに洋酒をたっぷりと含ませます。これを食卓で日をつけてフランベします。この時の炎がクリスマスの雰囲気を頂点に押し上げてくれるのです。やっぱりお国柄です。
日本のお正月に匹敵する重要なイベントだけに、人々の思いは特別なのだと思います。
では、日本のクリスマスケーキは、なぜ丸型が主流なのでしょう。丸いものを好む国民・・・とか言われますが、定かではないようです。ただ作ってみて分かるのは、作業性が高くて、量産が可能なのです。
それだけに二十五日の夜から安売りが始まったり、それを待ったりという夢のない現実が生じるのでしょう。
いずれにしても、クリスマスケーキの提案の仕方や認識そのものが欠落していることだけは確かなようです。便利さ、手軽さばかりを望む生活をこの日ぐらいは避けたいものです。特に今年は重く哀しい人的災害があった年です。共に生きる喜びを、それぞれの立場で表せれば幸いです。